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「・・・うう。やっぱり恥ずかしかった」 戦利品を開封しながら、スザクは頬を赤らめ、項垂れていた。 開封しているのはドールハウス。 とはいえ、流石に家を買ったのではなく、細かな家具を買ってきたようだった。 ベッドやイス、食器。運よくどれもルルーシュに丁度いいサイズだ。 それらを順に開封するスザクは相変わらず眉を下げていて、先に開封した人形用の衣服に袖を通しながらルルーシュは首を傾げた。 「何が恥ずかしいんだ?」 どうやら人形の服は彼には大きいらしく、袖をまくってはいるが、身につけるのに支障は無さそうだった。 「恥ずかしいだろ?もうすぐ20歳になる男が人形の家具とか服とか買うなんて」 スザクの必死の訴えにも、ルルーシュは意味が解らないと首をかしげた。 「・・・君は平気なの?こういうの買うの」 「よく買っていたからな」 さも当たり前のように言うので、スザクは目を見開いた。見た目は男だが、趣味嗜好は少女なのだろうか?そうは見えないけど。 それとも小人の世界では、男が買ってもおかしくは無いのだろうか。 疑いの眼差しをむけると、ふんわりと柔らかい笑顔で、彼が笑った。 「妹が好きなんだ」 あ、そう言う意味か。 妹とか姪っ子とか従妹とかそう言う理由で買うのであれば、確かに恥ずかしくは無い。 ああ!プレゼント用って言って梱包してもらうんだった! スザクは今さらその方法に気づき、更に落ち込み、ルルーシュはその様子を不思議そうに首を傾げながら見ていた。 どうやら彼の妹は、動物の家族が暮らすシリーズものが特に好きらしく、よく買ってあげるのだと言う。 動物のシリーズ物はここでも年齢問わずに根強い人気がある。小人の世界もこことあまり変わらないんだなと、家具を組み立て、食器類を洗った。 時計を見るとそろそろ正午、お昼だ。 スザクはいそいそと食事の用意を始めた。 小さなマグカップに紅茶を注ぎ、小さな皿にホットケーキを一欠けら。その横にクリームを添えて、別の皿には少量のポテトサラダ。 「これでいいかな」 「ああ、ありがとう」 そう言うと、彼は椅子に腰かけ、テーブルに向かった。もちろん人形用の家具だ。 人形用のフォークとナイフを使い、ホットケーキを切り、クリームを乗せて口にする。その所作が優美で、思わず見とれてしまった。本当に物語に出てくる王子様そのものだ。 「・・・甘いな」 どうやらクリームが甘すぎたらしい 「まあ、クリームパンのクリームだから、甘いよ」 しかもコンビニで買ってきたパンだから味も濃い。僕はそのクリームパンに齧りつきながらそう言った。うん、甘い。 彼用に買ったホットケーキにはメイプルシロップがついていたが、僕の食べてたクリームパンに興味を示したため添えてみた。残念ながら彼の口には合わなかったらしい。僕は別の皿に、ホットケーキについていたメイプルシロップを開け、スプーンで彼の皿に少量入れた。 「ところで、君、あの箱に入る前の事何か覚えてるの?」 「覚えているが?」 何を当たり前な事をと言いたげに、彼はこちらを見上げた。 「え?じゃあ、どうしてあの箱に?」 「ああ、そう言う意味か。それは覚えていないな。殴られた後意識を無くしたらしい」 「殴られたって、誰に!?」 やはりあの痣は暴行の跡だったんだ。 スザクはじっとルルーシュを見つめると、どうやら思わず口が滑ってしまったらしい彼は、目を背けた。 「ルルーシュ」 「話した所で意味は無い」 「意味はあるよ。君をまた狙うかもしれないじゃないか」 「まあ、その可能性はあるが」 そういうと、カップを傾けて紅茶を口にした。 「・・・甘いな」 そして眉を顰める。 「ロイヤルミルクティーだしね」 僕は自分が飲んでいたペットボトルを振った。 「甘いものが好きなのか?」 「どちらかといえば苦手かな?」 童話のイメージで小人の食事=甘い物だったのだが、どうやら違うらしい。 紅茶が飲みたいと言うので、こちらも甘そうなものを選んだのだ。 「今度は無糖のストレートティ買ってくるよ。で、やっぱり狙われる可能性あるんだ」 「まあな。もし俺が生きていると知れば、今度は確実に殺しに来るだろうな」 物騒な事を口にするので、僕は眉を寄せた。 殺されると言う直接的な話しを平然と口にするが、その顔に焦りも恐怖もない。 大袈裟に言っているだけなのか、良くあることなのか。 勘に従うなら後者。 よく命を狙われているのだ。 「君、何したのさ」 思わず詰問するような口調で尋ねた。 「何と言われてもな」 「何かあるから狙われるんだろ?」 その僕の言葉に、ルルーシュは困ったように笑った。 「そうだな。強いて言うなら、俺がこうして産まれてきた事が理由だな」 |